鴨沢神楽 かもさわかぐら

民俗 無形民俗文化財

  • 選定年月日:19971204
    保護団体名:大債内野口傳斎部流鴨沢神楽保存会
  • 記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財

 これは東北地方に広く分布する権現【ごんげん】を舞わすことを主眼とした獅子神楽の代表的な一つ早池峰【はやちね】神楽(昭和五十一年重要無形民俗文化財指定)の系統のものである。早池峰神楽の大償【おおつぐない】の野口宝乗院という修験者が、京都の宮神楽の斎部流を取り入れて、大債内斎部流野口家流式という神楽の流派をたてたといわれる。それが幕末に東和町【とうわちよう】の晴山【はれやま】に伝えられ、さらに江刺市の軽石【かるいし】を経て明治の初めに鴨沢に伝えられた。鴨沢では堅固な神楽師の伝承組織のもと、この流儀を今日にまでよく守り伝えている(晴山、軽石など他地域では、もはや不十分な形でしか伝承し得なくなっている)。
 この神楽は、新山神社の祭礼ほかで演じられるとともに、明治五年以来毎年欠かさず権現舞による各家々巡りの火防【ひぶ】せの門打ちを行ってきている。伝承演目には、儀式的な演目、「鳥舞【とりまい】」「翁舞【おきなまい】」「三番叟【さんばそう】」「四弓【よゆみ】」「榊【さかき】」「岩戸【いわと】」の式六番、「天女【てんによ】」「機織【はたおり】」などの女舞【おんなまい】その他、合計三十六番の神楽があり、それに狂言が十数番、さらに下舞【したまい】、権現舞とあり、他地域の同種神楽に比べて豊富な内容をもっている。女が袖をつまみ人差し指を立てて後ろ向きになったまま幕を出て、ゆっくりと立ち上がり、それから上半身の振り豊かに細やかな舞を見せる。女舞の各所にこの種の手が多用されているのがこの神楽の特徴で、この点は早池峰神楽の女舞のそれよりも美しい型とみる人もいる。
 以上のように鴨沢神楽は、神楽の変遷の過程を知るうえで貴重な伝承であり、地域的特色にも富んでいる。

鴨沢神楽 かもさわかぐら

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